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病院機能評価について

平成15年(2003年)更新 審査結果

病院機能評価審査結果報告書 (平成15年度実施 財団法人日本医療機能評価機構)

総括

 貴院は 平成9年に一般病院で受審され、今回更新受審であるが、初回受審後に一般病床から療養病床、精神病床に大きく転換されて、一般、療養(医療保険型、介護保 険型)精神の複合病院となり、さらに回復期リハビリ病床も設置されている。このため実質的には新規病院の受審として評価させていただいた。しかしながらす でに一般病院として認定されているので、機能評価を受けるための基礎作りはできており、理念・基本方針の見直し、地域ニーズの把握と病院機能の地域への周 知、経営管理分析と評価などが縦続的に行われてきた結果として現在の病床区分に転換されたことがよく理解できた。

 また最近外来機能を分離されて、入院機能をより充実させる取り組みが行われており、さらに法人として診療所、訪問診療機能などを別組織として独立させる 一方で、これらを有機的に機能させるための情報管理体制の構築が進められているところである。このように急速な組織の拡大が図られているために、機能分担 がやや不明瞭な部分がみられており、組織図でも各組織の責任所在や指揮命令系統がわかりずらいところがある等、法人組織全体として今後の整備が待たれると ころであろう。

 また病院建築・設備にも新旧が混在しており、アメニティや療養環境面での統一ができにくいことが難点であるが、とくに感染面からも入院患者に直接的な影響をもたらす可能性が高い給食設備、とくに調理場の衛生管理には特段の配慮と対応が望まれる。

 この他、療養病床で多い胃瘻造設患者対策や褥瘡防止対策、老人性痴呆を収容されている精神病棟では任意入院や閉鎖病棟の取り扱い、小額とはいえ金銭の取り扱いなど、専門精神病床に比し、管理体制・方法に問題がみられており、改善の必要があるものと考えられた。

 殊にこれらの病床は今後ますます地域ニーズとしても高まるものと病院側でも予測されており、また今後ともより一般病床からこれら病床への転換を計画されているので、その管理体制には一層の注意と配慮が望まれる。

領域総括:病院組織の運営と地域における役割

 病院の理念と基本方針の確立については明文化や病院案内への掲載、地域ニーズの把握、定期的見直しなどが行われおり適切であったが、その内容については 一層の充実を期待したい。殊に貴院が(老人性)痴呆の精神科病棟を運営されていることからも、医療の実践の場で個々人の尊厳を守るためのより具体的な指針 となるべき基本方針を期待したい。

 理念・基本方針の内外への周知・徹底に努力し、地域における病院の役割・機態が明確にされて、将来計画も策定されており適切である。

 また、病院長(理事長)の極めて強いリーダーシップが発揮されており、聯員それぞれが自己の役割を全うすべく努力している様子をよくうかがうことができ たが、これも強すぎるとヘッドシップに陥り、職員の自主性を損なう可能性もあので、さらに幹部職員への権限委譲を図りながら院長、幹部職員による組織的な リーダーシップの発揮が期待される。

 病院の組織運営は、病院の意思決定機関である病院運営会議(部長会)が毎週定期的に開催されており適切ではあるが、法人事業が近年急速に拡大して、多く の併設施設を擁するようになった。各施設がそれぞれ固有の役割・機能を持っているが、病院を含めてそれらの施設を包括する現在の諸規程はかなり簡略な内容 である。例えば法人事業部と病院にともに事務部があり、両者にそれぞれ部長が存在している。両事務部とも法人の立場、病院の立場と職務範囲は一応区別され ているものの、多くの業務が輻輳しており、現場職員に対する指揮命令系統も一元化していないように見受けられた。したがって職務権限や責任所在もわかりに くい。すべての組織が直接理事長(院長)に集約されて一元化しているが、このような組織は組織運営上必ずしも効率的ではない。すべての職員が指揮命令系統 を理解できる組織図の工夫とこれを文書化したより詳しい組織規程の整備が望まれる。

 情報管理機能の整備については、情報管理委員会が組織されて機能している。しかし、オーダリングシステムがパスワードで機密保持されているとはいえ、画 面のハードコピーについては防止するすべがない。また、また各種院内情報システムが構築中でありオーダリングシステム、院内LAN、診療情報等それぞれ管 理部門が異なる等、今ひとつ相互の連携が不十分であり、今後のシステムの成熟を大いに期待したい。

 病院運営に必要な情報はオーダリングシステムとその情報を基礎とした会計情報を基に各種の詳細な統計資料が作成されている。しかし、医療の質に関する情 報は診療情報管理室による診療情報のコーディングが遅れ気味で、クリニカル・インデイケーターなどの評価ツールとして活用できるまでに至っておらず、今後 の充実に期待したい。

 診療情報は全面開示が原則で、開示の手続きも明確である。しかし、情報開示の重要性に関する教育は訴訟を意識した非定期開催の診療情報提供委員会と教育 委員会が共同して行うとのことであったが、ディスクロージャーやアカウンタビリティといわれる昨今、開示の意義や重要性についてより具体的な内容について 継続的教育を期待したい。関係法令の遵守については、適切である。

 職員教育については全職種により構成される教育委員会が組織されているが、研修内容は総論的である。重要度の高いものについて具体的テーマを設定すると ともにそれを反映したプログラム作りを期待したい。同時に教育効果の測定についても、単に受講者のアンケート調査にとどまることなく、効果測定のツール作 りについても一層の努力を期待したい。

 院外の教育・研修の活用はおおむね適切ではあるが、認定医取得などへの積極的配慮、出張報告書の情報共有化や外部の学会・教育・研修活動への評価基準の一層の充実などについても継続的な検討が望まれる。

 医療サービスの改善活動についてはインシデント・アクシデントレポートを再発防止・質の向上の生きた教材とする一層の努力を期待したい。またレポート提 出が医局・看護部中心であり、今後は全病院的取り組みへの努力を望みたい。改善活動への取り組みはCSに視点を置いた患者アンケート調査を行っているが、 調査内容は総括的で具体性に乏しく、調査の成果も必ずしも明確ではない。今後は、個別的・具体的に項目を設定したアンケート調査を実施して課題を抽出し、 併せて期間を定めた目標を設定して成果を評価する等、マネージメントサイクルの手法を取り入れた取り組みを期待したい。

 地域の保健・医療・福祉施設などとの連携、紹介患者の受け入れ、高額医療機器の検査委託については総合支援室が核として活動をしているとともに、医師も適宜関わっており適切である。

 患者の他施設への紹介・転院については、地域の保健・医療・福祉施設の状況把握を総合支援室が担当し機能しているが、紹介・転院が貴院の規模からみて必ずしも多くない。さらに紹介・転院を促進する一層の努力を期待したい。

 地域活動へ取り組みについては、積極的な往診の実施、在宅支援担当医師・当直医により近隣住人への安心感を与える等、努力されており適切であるが、療養 病棟患者の話し相手としてのボランティア受け入れについては、病院の地域への透明性を図るためにも、一層の活用を期待したい。

 広報活動は法人事業部が中心となり季刊の「eisei」と「年報」を発行している。「eisei」は患者も対象にしているが、「年報」はもっぱら職員対象であり、病院の正確な姿を地域に知らせる意味からも、地域への積極的配布が望まれる。

領域総括:患者の権利と安全の確保

 息者の権利に関する文書があり、院内掲示を行って患者・家族に周知させようとする努力は評価できるが、これだけでは十分周知されているとはいえず、また職員への周知の機会も十分とはいえない。また患者・医療者のパートナーシップを横築するための患者自身の医療への主体的な参加についても明文化されたものがなく、患者に対する説明と同意についても手順はあるが、説明内容が確実に記録されていない。この他セカンドオピニオンの説明や、プライバシーに配慮した説明場所の確保、心理的支援の指針など不十分な面があり、患者の権利や説明と同意などについての職員への一層の周知努力が望まれる。診療録開示には前向きに取り組む姿勢があり評価できるが、事例がほとんどなく職員教育の内容も具体性に乏しいので、より具体的な事例をもとにした教育を実施されてはいかがであろうか。

 患者の安全確保のための体制、手順はおおむね確立しているが、インシデントアクシデント報告の提出が部署により大きな差があり、また情報収集や情報を分析して問題解決を図るための教育・訓練などが十分でないために組織的な活動が少ない。今後は各職種のニーズを把握した技術的支援や訓練など一層の教育・研修への取り組みが望まれる。また医療安全に関するマニュアルに基づいて行われている医療行為のプロセス監査についても、その手順の確立と実行を期待したい。

 医療事故発生時の手順は文書化され、確立しており職員にもほぼ周知・徹底されており、おおむね適切である。

 院内感染管理は組織が作られ、対策マニュアルが整備され、教育も実施されておりおおむね適切であるが、感染管理の対象は診療部門が中心である。しかしながら病院旧館にある給食用調理場は空調が不十分で、室温調節が十分ではなく、食材搬入場所や下処理場など汚染区域と調理場との区別が明確でなく、床面・壁・天井などの清潔管理も十分でない、配膳車の出入口と調理場との区域が明確でない等、衛生管理の面から改善の必要がある箇所が見受けられた。すでに中期計画で改築計画があるとのことなので、早期実現を期待するとともに、現状の調理場の衛生管理については可能な限り改善の努力が必要であろう。

領域総括:療養環境と患者サービス

 貴院は外来部門を病院組織から分離されているので、病院組織の評価が主体であるが今回は外来・入院機能を一体的に評価したので、この領域では外来・病院組織をあわせて総括した。

 接遇に関しては「患者様サービス向上研修」が頻回に行われ、委員会のメンバー構成にもスタッフが自分たちの問題として認識するための工夫が認められる等、努力されており、ほぼ良好な状態であるが、今後は全職員への継続的な浸透への努力を期待したい。

 職員は名札を着用し、診療科目、担当医師名が明示されている。各部署の章任者名については病院ロビーに掲示されているが、外来クリニックには見当らなかった。また掲示の文字も小さく、注意しないと見落とす可能性があった。また総合支援室や喫煙所の位置もわかりにくく、院内案内や表示については一層の工夫が望まれる。

 外来では再診の予約制をとっているが、初診では利用者から「長すぎる」との苦情があり、職員からは待ち時間短縮の努力があまり聴かれなかった。今後の努力を求められる。

 医療相談は総合支援室として入・退院や療養のための種々の相談に対応し、院内のスタッフとの調整、外部施設とも連携して適切に活動しており、記録もあり適切である。

 院内各所には意見箱が設置され患者・家族の意見に耳を傾ける努力がみられ、患者満足度調査も定期的に行われ、高い満足度評価が得られているが、その反面「職員の言葉使いが不適切」などの意見もみられる。患者・家族の希望や意見に対しては事務部総務課と教育委員会の中の接遇委員会で対処しており、手順も明確にされている。相談室が少なく、狭いという苦情に対して部屋を改造する等、サービス改善の努力がみられるが、建物の構造上から設置場所、部屋数など十分とはいえない。患者・家族の希望や意見・苦情などへの回答や対応結果などは院内に掲示するとともに、ホームページにも広報されておりその努力は適切と評価できる。

 患者や面会者の利便性については、多くの高齢者を対象としていることを考慮すると喫茶室など家族とともに過ごせるようなゆとりの空間がとれないものか、今少し工夫が望まれる。面会時間は一般病棟は20時、精神科病棟は17時までであり、利用者の状況によっては柔軟に運用されているとのことであるが精神科病棟についてはとくに考慮されたい。また精神科病棟ではデイルームがなく、廊下にテレビがあるが落ち着いて観賞できる環境ではない。面会・通信・電話の制限などは行っていないが、電話の設置は精神科病棟だけでなく多くの場所でオープンである。

 院内各所のバリアフリーについては種々工夫されおおむね良好と評価されるが、病棟階段前にある大きな植木鉢は階段利用を制限する目的があるためとはいえ、身体の不自由な患者の歩行や車椅子使用者の廊下通行には邪魔になると思われた。

 プライバシー確保については、外来患者の呼び出しがマイクでしかもフルネームで呼ばれており、できれば予約番号や受付番号を表示する等の工夫を検討される必要があろう。診察室の構造や検査室への検体搬送状況などは良好であるが,病院側のロビーにある夜間救急用処置室にはベッドが多数並べられており、カーテンで仕切るとはいえベッド間隔も狭く、会話などは筒抜けであり、プライバシー面からの配慮が望まれる。
 病棟では面会室、面談室が確保できず、またトイレが男女共用である箇所が多い。病室患者名の表示は利用者の意向を専重する旨の掲示があり、意向を聞いているが、看護ステーションに置いてある診療録の背表紙の患者名が面会者にも至近距離から全部見える等、病棟におけるプライバシー確保についてはさらに工夫が望まれる。

 療養環境については病院幹部による院内巡視が最近開始されたところであり、患者が使用する設備・備品の点検についても同様である。今後の継続的な巡視、点検の実施に期待したい。病棟廊下には器材などが置かれており、身体の不自由な患者の通行に支障をきたすところがあり、また院内の一部には臭気対策が不十分な所がある等、院内の整理・整頓や清潔管理にはさらに改善が望まれる。

 患者の喫煙場所は広く確保されているが、もともと玄関ホールの場所を転用しているために外気が直接入り、臭気を院内に運ぶ等、ドアがあるが換気面でも十分ではなく、院内表示もわかりにくい。医局の分煙も十分とはいえず、まず職員への徹底を含めて分煙場所の早急な改善を望みたい。

 病棟は旧館と新館で環境面での差が大きく、病室面積・採光・空調・食事場所なども場所により異なっている。それぞれの場所で工夫されておりその努力は認められるが、残念ながら現状ではすべてが快適な療養環境とはいい難い。ベッド、トイレ、浴室などについても同様である。

 災害時の対応については院内災害訓練がよく行われており、マニュアルも整備されており、評価できる。大規模災害についても同じく適切であった。

領域総括:診療の質の確保

<診療体制の確立と各部門の管理>

 診療組織全般の体制はほぼ適切に対応されている。しかしながら医師数や倫理委員会の構成メンバーに外部委員の導入を必要とする等、一部考慮するべき点が認められた。

 また日常診療で倫理上問題となる症例や課題について具体的に検討する等、診療における倫理に関する教育・研修の取り組み内容を検討していただきたい。

 医師の採用基準は大学人事への依存体質からは脱却しており、病院として基準が作成され、さらに医師の評価基準があり、人事考課も行われている。このような体制は他の同規模の病院にはあまり例がみられず、その取り組みは高く評価される。
 診療管理部門は1名の診療情報管理士と現在研修中の職員1名を中心にした体制で、ICDのコーディングにも取り組まれているが、コーディングに取り組みはじめて日が浅いために、それらを基にした診療統計の作成やクリニカル・インデイケ一夕ーを設定しての質の向上に生かせるまでには至っていない。今後の積極的な取り組みに期待したい。

 図書室は外来ロビーの一角を囲った場所を職員用としているが、多くの図書は各部著分散管理となっており図書検索用情報機器が設置されているが、おおよそ図書室とは名ばかりでハード面の改善が必要であろう。文献入手体制は整備段階である。

 臨床検査部門はほぼ適切に対応されているが、機器の始業点検は実施されているが定期的保守点検体制は不十分である。

 病理診断はすべて外注であり、病理解剖は行われておらず、必要に応じて外部委託されているが、病院の機能・方向性を考慮すると現状でもおおむね適切と判断できる。

 放射線部門は非常勤専門医による画像診断が行われているが、緊急性が少ない貴院の現状から判断するとおおむね適切である。

 薬剤部門は病院規模から考えても在庫品の棚卸しが年1回というのは少なすぎる。それ以外の業務内容、管理体制などについては適切であった。輸血用血液製剤は薬剤部管理であり、使用実績や、廃棄状況の把握など管理状況は適切である。
 手術対象患者は整形外科的疾患のみで、悪性腫瘍およびその疑いの患者は原則として他院に紹介されている。そのため迅速診断は行われていない。手術部門はほぼ適切に管理されているが、手術場、中材の清潔・不潔の動線の見直しが必要であろう。
 救急部門は初期一次救急対応のみで二次救急にも対応していないが、貴院の機能や地域における機能分担や地域住民への周知状況から判断しておおむね適切と評価される。

 栄養部門は最近、厨房業務が外部委託されたが、調理室の衛生管理にはとくに問題が認められる。院内感染管理・安全管理の面から是非とも改善されたい。患者の状態に合わせた食事の提供についての努力は評価できる。栄養指導にも積極的に取り組まれたい。

 リハビリテーション部門は総合リハの施設基準に適合しているだけに件制は整備されており、職員の士気も高く、外部発表・執筆活動を積極的に行う等いずれも極めて高く評価される。しかしながら医療保険型療養病棟の患者は在院日数も長く、在宅への移行例が少ない。可能な限り在宅に移行できるようリハビリテーション部門のより一層の頑張りを期待したい。

 訪問サービス活動は法人内の訪問サービス部門と密接に連携して適切に対応されている。

 

<適切な診療活動の展開-ケアブロセス1->

 診療の責任体制にと記録の徹底については、回診が一般病棟では毎日行われているが、療養病棟は週3日程度であった。患者の訴えや要望に応え要望については記録が不十分なところがみられた。医師の指示の点伝達については、看護師リーダーを中心に仕組みが確立されている。また、診療録の記載は患者の状況の適切な把握のためにも、診療・看護を一体とした時系列記載を検討されてはいかがであろうか。

 入院診療の計画的対応については、おおむね適切であるが、D病棟で平均存院日数が非常に長く、胃瘻造設患者が多く、原因や背景の検討が必要である。

 検査の実施と診断の確定については、急ぐべき細菌検査が休日にできない状況である。

 与薬投与の管理については、薬剤師の病棟で関わりをもう少し強化されたい。また、療養病棟での降圧剤使用患者の血圧測定がきちんと行われていないので、よりきめ細かい対応が必要と思われる。

 手術・麻酔・処置については、麻酔医の術前訪問体制が十分とはいえない。また、術後の覚醒管理についても麻酔医の関与が十分とはいえない。

 栄養管理と食事指導については、A病棟で栄養評価が十分といえなかった。

 リハビリテーションの実施について、D病棟では平均在院日数が長く、在宅に向けてリハビリが不十分で、在宅退院患者がほとんどいないとのことで、病棟のリハビリに対する関与が物足りない状況であった。また、リハビリの評価検討は不十分である。

 QOLへの配慮については、D病棟で褥瘡合併患者が多くみられた。

 行動制限についてはおおむね適切である。

 院内緊急時の対応についてはおおむね適切であるが、定期的な訓練がなされていない。

 療養の継続性の確保について、病棟では適切な療養絶続のための調整の場がない状況であり、在宅復帰を阻んでいる要素を十分検討され、適切な施設・制度への紹介をされた。
 診療の質の保証については剖検がなく病理医が関与した症例検討会がない。また、治療実績がまとめられていなかった。

 

<適切な診療活動の展開一ケアプロセス2->

-E・F・G病棟-

 診療の責任体制は主治医と担当医の関係はおおむね明確にされているが、一部の病棟では緊急時、休日などの体制が不明確な部分もあった。また指導医としての立場も必ずしも明確ではないので考慮されたい。

 回診は定期的になされているが、診療録は毎日記載されていないものも散見された。

 オーダリングシステムが導入されてまだ日が浅いため、連携が不十分な面もあるが今後に期待したい。また診療録記載の診療・看護との一元化にも努力してほしい。

 入院に至る過程はほぼ適切な手続きのもとに行われているが、一部の病棟では入院決定に至る基準が明確でない面があった。入院診療計画は適切に作成され、それに基づいて治療が行われている。治療の変更時にも適切に対応されている。
 検査は病院の性格もあるが、緊急、時間外などへの対応に改善の余地が残されている。また、薬剤投与は適切に行われているが、病棟での薬剤の管理については改善が必要である。栄養士による食事指導が必ずしも十分ではない。

 理学療法土、作業療法士、言語療法士の積極的な関与により、計画的にリハビリテーションが行われている。貴院で最も力を入れている分野でもあり、大変素晴らしい。行動抑制は全くなされておらずその配慮に努力していることが十分うかがえる。

 退院に向けた努力と退院後の継続的な療養に対する取り組みはおおむね適切であるが、在宅への退院患者が少ないのが課題である。

 最後に治療実績を十分検討し、より質の高い医療の提供への取り組みを希望したい。


-H病棟-

 診療の責任体制はおおむね良好であるが主治医、担当医は同一人で指導医が明確でない。回診は定期的に行われ、他とのコミュニケーションもよく、おおむね円滑に機能しているが、診療録への記載が不十分である。

 入院決定と入院形態を決める経緯が明確でなく、説明による同意が確認できない面があるので速やかな検討・改善をお願いしたい。入院計画は適切に立てられ、計画どおりに実行されているが、入院が長期に至った場合、診療計画の見直しが少ないので検討されたい。

 検査の実施と判断、薬剤投与の管理はおおむね適切に行われているが、病棟における薬剤の管理方法を改善されたい。栄養管理と食事指導は対象になる患者も少なく問題はない。
 精神科的(痴呆老人)リハビリテーションは豊富な専門職種により行われており良好である。

 抑制、拘束は全く行われていなが、閉鎖病棟での処遇そのものが行動制限であり、できるだけ開放的処遇への努力が望まれる。

 院内緊急時の対応はマニュアル化されており適切であるが、身体的な緊急と精神的な緊急への対応、双方について考慮されたい。

 診療の継続性は退院後の療養の計画がマニュアル化されているが、退院患者が少ないこともありあまり実践されていない。より積極的に在宅に向けた働きかけが望まれる。最後に治療実績をもとに痴呆老人の治療について検討し、より質の高い痴呆老人の治療を検討していただきたい。

領域総括:看護の適切な提供

<看護体制の確立と組織管理>

 看護部門の理念が明示され、理念を反映した活動も認められる。目標管理については各看護単位の活動計画が具体化され、中間評価の実施も行われておりきわめて適切である。

 看護部の組織は責任者が組織図や業務規定では看護部長となっているが、実際には看護部長代理である等、現状を反映した組織図の整備が望まれる。また看護部長および代理の業務規定はあるが、師長・主任の業務規定がない。また組織図上では看護師と介護福祉土が同じ位置付けにあり、准看護師が下になっている。医療の現場での指示命令系統としては適切とは思われない。貴院では看護・介護職員が混在して業務が行われているので、指示・命令系統を明確にされ、かつ横のつながりにも配慮されて、患者にとって質の高い看護・介護が適切に行われる組織作りが行われるように期待したい。

 看護部門の会議や委員会活動は規定もあり機能しているようであるが、議事録の整理が不十分である。

 組織運営は病棟会などで職員の意見を吸い上げる努力がなされている。看護ケアを実践するうえでの看護職員への支援は、基礎看護レベルでの支援に止まり専門的な分野までには至っていない。効果的・効率的な看護ケア提供のための環境整備については、オーダリングシステムが導入されたばかりで、まだ日も浅く不慣れなために残念ながら未だ十分な業務効率化に至っていない。今後に期待したい。

 看護部門の職員の能力開発では、人事考課に伴う評価が行われていたが、看護の専門分野に求められる能力評価基準が今年の3月に完成したばかりで、新年度から導入されるとのことであり今後に期待したい。

 教育・研修計画は年度ごとに立案、実施され、資源も確保されており、また看護協会主催の管理研修にも参加しており適切である。

 

<適切な看護活動の展開-ケアプロセス1->

 看護実践と章任体制については、看護を必要とする人に対する適切な看護・介護の実践は十分とは言い難い。看護基準・手順についてはおおむね適切であるが、介護基準についても定期的な見直しを期待する。

 医師の指示に基づく医療行為の実施は、一部の病棟で薬剤投与後の定期的血圧測定などの観察が不十分な部署も見受けられた。看護記録も記録様式が整備され記録のマニュアルもあるが、記載内容は十分とはいえず、また診療・看護との記録の一元化を検討される必要があろう。看護計画は初期計画が見当らないものや評価・修正もなされていないものもあり、ばらつきが見受けられた。また、患者・家族への説明と意見の反映についても、現場では実施されているとのことであるが残念ながら記録上では確認できなかった。

 検査への関わりは適切である。薬剤投与に関しては投与後の経過観察が不十分な病棟があり、改善が望まれる。一般病棟における周手術期の看護や栄養管理はおおむね適切であるが、栄養士による食事指導件数は少ない。

 リハビリテーションは合同カンファレンスが行われて適切に実施されているが、医療保険型療養病棟ではベッドサイドリハビリはやや消極的である。抑制は原則として行わない方針であるが、適用する場合の基準は明確であり手順書も整備されている。

 看護の継続性はMSWと連携しておおむね適切に行われているが、退院計画がない病棟や転棟・転院サマリーが作成されているが、外来への退院サマリーが作成されていない病棟も見受けられた。

 逝去時の対応は院内に個室が少なく、看取りのための適切な環境を維持することができにくい状況である。また霊安室のプライバシー確保にも配慮されたい。

 看護ケアの評価と質向上については、研究会の開催・年報の発刊などが行われている。

 今後はデータの収集だけでなく分析まで行われることを期待する。

 

<適切な看護活動の展開-ケアプロセス2->

 看護の責任体制は明確にされ、看護を必要とする人に適切に実践されている。看護基準・手順は整備されて適宜見直しがなされ、日々の業務に活用されている。各病棟で看護ケアを提供する各人の役割と責任内容は明確にされているが、一部の病棟では当日の担当者名が明示されていなかった。

 治療については指示受けの仕組みはオーダリングにより整備されている。治療についての患者の反応の観察と記録はおおむねなされているが、精神科病棟においては記載が少ない。医師とはよく連携がとれており、指示についての疑問などについてはよく相談されている。

 看護記録についての基準は整備され、患者・家族の要望・意見についてもおおむね記録されているが、全体的に記録が少なく、とくに夜間の記録が少ない。

 提供された看護ケアのサマリーは、介護病棟においては退院後、訪問看護・居宅支援事業、入所施設などを利用することが多いためほぼ作成されていたが、これらを利用しない場合や、本人・家族からサマリーの希望がなければ書かれていない。診療録は看護記録との一元化がされておらず、医師は看護記録を参照するとのことであったが、診療・看護の記録の一体化記載が望まれる。

 看護計画・ケア計画について、介護病棟では入院相談時の情報に基づいて多職種によるカンフアレンスが実施され、初期計画の立案、1か月後、3か月後、6か月後の定期的な評価、計画の見直しが適切に行われている。患者・家族はできるだけケアカンファに参加する等その意向が尊重されており、説明もよく行われ、記録されている。精神科病棟においても対象が老人痴呆患者で介護病棟と似ているためおおむね同じく良好な関わりが実践されているが、看護基準からのバリアンス検討など精神科病棟独自の対応の検討にまでは至っていない。

 検査の実施への看護の関わりについては、手順が整備され、多くは患者および家族に十分な説明が行われている。精神科病棟では痴呆老人という対象の特性に対する工夫が明文化されればさらによい。

 与薬への看護の関わりについてもほぼ良好であるが、精神科病棟では検査と同様一層の工夫が期待される。緊急的な薬剤投与の指示に対しては当直医と相談し、適切に行われている。

 手術は行われていない。

 食事は患者個々の嚥下能力がよく評価され、その能力に応じた食事の形態で提供されているが、食事指導の件数は少ない。

 リハビリテーションは理学療法士・作業療法士など豊富な人材により十分に実施されており評価できる。

 行動制限はしない方針であるが、もし実施する場合は主治医の指示のもとに、院長決裁まで受けなければならない厳しい方針と手順が決められており、「身体拘束ゼロ宣言」のもとに、細かな配慮と見守りで効果をあげ、その工夫の一部については看護学会に発表する等、十分に評価される。精神科病棟においても拘束・制限はゼロに近い状態にまで努力がなされている。

 看護の継続性については、介護病棟ではほぼ適切と判断される。精神科病棟では対象の特性もあろうが退院に向けた積極的な取り組みはあまりみられない。

 外来における看護ケアは病棟からの看護サマリーによる維続性が不十分なこともあり、十分とはいえない。

 患者逝去時の対応手順は明示されており、良好であるが、霊安室は殺風景であり、複数使用時にはプライバシーが保たれない。

 看護ケアの改善への取り組みは毎朝のミーティングと週1回のケアカンフアレンスで検討されており、医師とのコミュニケーションは良好で、サービス担当者会議でケア検討会も行われ、夜間のおむつ交換の回数を6回に見直す等、業務の改善に生かされている。バーサルインデックスを用いたケアの質の評価などにも取り組んでいるが、看護サービスを評価するシステムにまでは確立していない。精神科病棟では、基礎的な勉強会の段階であり、研究やサービスの開発にまでは至っていない。

領域総括:病院運営管理の合理性

 人事管理の面では臨時職員の就業規則はあるが給与規程がないこと、看護職員の退職率が高く、採用計画や夜勤勤務回数など就業状況に大きく影響しており、看護職員の確保が望まれるほか診療現場での医療機器の中央管理を進めるためには臨床工学技士の採用も望まれる。

 貴院では職員の過半数を代表する組織が確立しておらず、病院管理者と職員が話し合う仕組みがない。採用対策だけでなく職場環境や福利厚生活動など労働安全衝生面を含めて働きやすい職場環境の整備に努める等、総合的な人材確保対策を検討する必要があろう。人事考課の基準があり、活用されているが、考課者の教育は導入時に行われて以来継続的には行われていない。

 一方、財務会計、予算管理・執行・投資計画などは適切で、病院経営管理面では各種の経営指標に基づいて部門別管理や診療科別収支管理などきめ細かい分析が行われており、経営改善の努力が常に行われており、これが人事考課にも反映されていることは極めて優れているといえる。

 医事業務の手順も適切で、窓口業務、未集金の把握と対応、レセプト作成・点検、返戻・査定への対応なども適切に行われており、病床管理委員会を中心にした病床管理も適切で、効率的な病床運営がなされている。

 病院施設・機器管理も適切であるが、医療ガスについては現場における日常点検業務がなく、使用前点検に止まっているので、今後の改善が望まれる。日常使用する医療機器の点検は部署で担当者が実施し、必要時に事務部経由で保守・修理を行っているが、病院規模から考えて臨床工学技士などの専門家による中央管理体制の構築が必要であろう。

 給食設備は建物の老朽化もあるが安全衛生面からも多くの問題が見受けられるので、改築移設を待たず可能な限りの改善を検討される必要がある。食材の保管、食器の洗浄・消毒・保管などはおおむね適切である。

 廃棄物の処理方法は適切であるが、保管場所については雨水や鳥虫などの侵入防止を図り、感染性廃棄物の表示を徹底されたい。

 診療材料は委託業者による院外倉庫方式の末端納入時に病院資産となる物品管理方式であり、在庫量も少なく、購入の中央化や適切な処理・管理が行われている。業務委託については毎年の見直しは行われていないものの、必要に応じて臨時見直しが行われてぉり、おおむね適切であるが、事故発生時の対応手順などの文書化を検討されたい。

 訴訟などへの対応も適切である。

領域総括:精神科に特有な病院機能

 貴院はまず、指定病床をもっていない。したがってその機能が限定されている。

 とくに措置入院の受け入れは不可能である。そのため、移送による救急入院も限定される。現に医療保護入院も一人しかいない。残りはすべて任意入院である。

 しかも、全員が閉鎖病棟で処遇されている。入院患者の大部分が痴呆老人で認知能力が低下している状態であり、このような患者で入院時に任意入院の同意が取れているかどうかきわめて疑問である。任意入院の主体はあくまでも患者本人であり、同意能力の存否判定の基準作成や精神保健指定医の指示による医療保護入院の処置などを検討される必要がある。また封鎖病棟への入院承諾も書類上はとられているが、本人が理解し了解した上での承諾かどうかも不明である。

 病棟は物理的な問題は致し方ない面はあるとしても多床部屋が多いこと、トイレが少ないことなどアメニティの面からもかなり改善の余地がある。

 作業療法士が関わっての痴呆老人患者に対するリハビリテーションは計画的に行われているが退院に向けての働きかけが少ない。このことは現に1年間の当該病棟からの退院数、退院の経路、在院平均日数に表れている。

 隔離室がないので隔離は行われていない。身体拘束に対する手続きも適切に行われている。しかし、閉鎖病棟での処遇事態が行動制限であることを認識して処遇しなければならない。

 通信・面会・電話の利用の自由保障についてはマニュアルがありおおむね適切である。しかし電話が看護詰所前に設置されていることは検討事項である。生活訓練、作業収益はなく、また使役も行われておらず、デイケアも行われていない。小遣いは預かっていないが、電話をかけるための少額の預かり金があり、家族との合意書があるが、預かり場所が詰所の引き出しの中で個別にノート管理である。額は少なく小型金庫で管理する等、管理方法についても検討されたい。

 患者の身体合併症の治療はよくやられており、他科との連携も適切に行われている。

 最後に痴呆の治療に特化した病棟とはいえ精神保健福祉法の枠組みの病棟として他の精神疾患の扱いも望まれる。外来機能にしても然りである。

領域総括:療養病床に特有な病院機能

 入院患者の受け入れは総合支援室を窓口にして行われているが、気管切開、レスピレーター使用、MRSAや生活保護の患者は基本的に他院を紹介し、それ以外について受け入れるという方針が明確にされており、毎日の検討会で受け入れの是非を検討しており、その記録も作成されている。

 訪問看護は法人の訪問看護ステーションで行われている。

 患者の権利については、本人の意思を専重するための工夫がなされてはいるが、必ずしも十分とは言い難い。また設備・環境面が不十分なため、一部の病棟では十分に権利を行使できる環境にあるとは言い難い。金銭は原則としては預からない方針であるが、生活保護や身寄りのない患者などについては経理課で預かって領収書を発行している。

 小銭は詰所で個別の帳簿管理を行っているが、精神病棟と同じく適切な管理を検討されたい。

 

<ケアプロセス1>

 医療保険型療養病棟では褥瘡患者が7名あり、また、訪問時に臥床中の患者も多く見受けられた。今後は寝たきり・褥瘡ゼロ作戦を立てられ積極的に実践されることを期待したい。

 

<ケアプロセス2>

 介護病棟においては生活機能の自立や在宅復帰の可能性を検討し、2年以内の退院に向けて努力している。機能障害の原因について多職種で検討し機能回復に向けた取り組みが多くみられた。

 生活機能の自立や在宅復帰に向けたケアプロセスは適切に展開されている。とくに摂食機能や嚥下機能については細かく評価され、その他の機能についても維持・向上に努めている。また季節ごとの行事を取り入れ生活に変化を持たせる等、工夫しており適切である。

 在宅復帰後の支援としてショートステイの受け入れ、緊急時の入所などを行っていることは評価できる。